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声をかくす人 [映画 か行]

声をかくす人 を観てきました。
conspirator_2012102703.jpg


監督はロバート・レッドフォード、主演はジェームズ・マカヴォイ、共演がロビン・ライト、ケヴィン・クライン、エヴァン・レイチェル・ウッド、トム・ウィルキンソン....
宣伝が地味だったようで、まるで見掛けなかったけれど、関係者が豪華です。
・・・で、公式HPで予告編を観ると、面白そう・・・・。
始まったのが10月終わりだから、うかうかしてると終わっちゃうので慌てて観に行きました。

【鑑賞日:2012年11月28日(水)】

今回もかなりネタばれです。 

ハッキリ言って、ジェームズ・マカヴォイの最終弁論は圧巻でした。 あぁ、それなのに...です。

リンカーン暗殺犯人ブースが出入りしていた下宿屋の女主人メアリー・サラット(ロビン・ライト)が共謀者として逮捕され、南北戦争の戦時下(南軍リー将軍の降伏後、わずか数日)に南軍支持者の犯行なので、通常裁判でなく、軍法会議に掛けられました。 陸軍長官スタントン(ケヴィン・クライン)はなんとしても死刑に持ち込もうと、検事役と裁判長、裁判官に自分の腹心を送り込みます。
弁護士は当初は、司法長官も務めた上院議員のジョンソン(トム・ウィルキンソン)でしたが、南部出身者なのでこの北軍の軍法会議ではまるで発言力がなくなってしまうため、北軍将校だった若い弁護士のフレデリック・エイキン(ジェームズ・マカヴォイ)に弁護を任せる。メアリー・サラットは罪状認否で無罪を主張したきり、ほとんど口をつぐんだ状態。エイキン自身、実は当初、彼女の無罪を信じていなかったけれど・・・・という話。

本当に共犯の犯人グループを他に3人裁いているのに、なぜ更に彼女までスケープゴートにしなければならなかったのか、スタントン陸軍長官の拘りが理解できませんでした。

暗殺ショックに早くケリを付けて混乱した国を早く建て直したいのは分かります。 しかしそのために彼女を有罪に持ち込まなきゃならないことが、どうしても理解できない。長官側の人間(主任検事、裁判長たち)も本音では彼女の無罪が分かっているから、弁護側の証人だった人物を寝返らせてまで強引なことをしたのだと思う。
本当は無実だと分かっている人間を絞首台に送るのは、ヒトのすることだろうか、法治国家と言えるだろうか、リンカーンの目指した国の姿だろうか・・・
彼らはそのようなことも考えず、己の良心に恥じることが無かったのだろうか
自由の国・アメリカも南北戦争の混乱期には、こんな非民主的な独裁国家のようなことがまかり通っていたわけで....(この1年後、戦時でも民間人を軍法会議で裁いてはイケナイということにはなったそうだけれど....)

裁判官の合議では終身刑なのに、三権分立で司法権の外にいるはずの陸軍長官が判決結果に介入し、判決を死刑に変更する(普通の裁判と異なり軍法会議だからできるんでしょうか...それとも不当手続??)
さらに、判決後に裁判所の人身保護命令(通常の法廷で裁判のやり直しを命じたもの)が出ているのに、大統領命令で死刑を執行することができるのなら、初めから大統領命令で裁判を省略して処刑すれば良いあの裁判は全くの茶番であったことがここで明らかになった。
要するに、振り上げた拳を「1人に付いては間違いでした」と降ろすことができないから突っ走った。メアリー・サラットは、北軍陸軍長官のメンツお上の無謬神話を保つために処刑されたに過ぎない。(無法地帯だ[がく~(落胆した顔)]
無実のメアリー・サラットを救う唯一の方法として、人数の帳尻を合わせるために息子が母に代わって自首すれば…なんてことが映画の中で取りざたされているけれども怪しいもので、「4人並べて絞首刑」が「5人並べて絞首刑」になるだけのことではないか…という気がする。

アメリカの裁判制度の中で、司法取引というのは最悪の仕組み警察・検察側が合法的に手抜きして、特定の誰かを不当に陥れる結果(冤罪等)になろうとも、真に罰すべき人間に不当に軽い刑罰を科することになろうとも(量刑取引)、構わずに早く決着を付け、楽をする仕組み)だと思っているけれど、この映画の中で、軍法会議の中で…という特殊な事例だし、まだ誰も司法取引なんて概念や仕組みを意識したりせずに…だろうけれど、まったく同じことをやっていたので驚きました。
比較的初めの方の検察側証人が正にそうで、彼は共謀者としてほかの被告たちの列に並ばされていても全くおかしくないのに、メアリー・サラットに不利な証言をしたことから証人席に立ち、訴追・処罰を逃れ、自由の身でした。典型的司法取引だと思います。
前に書いた観た完全なる報復という映画(ここをクリック → )は司法取引の問題点を抉る映画でしたが、この頃からその問題が始まっていたんだな...と思いました。

メアリー・サラットが必死にかばった息子のジョン・サラットは、普通の裁判にかかりましたが、裁判官の票が割れ、無罪放免されたそうです。
また、主人公のフレデリック・エイキンは弁護士を辞め(司法制度の限界を悟ったんでしょうね)、ジャーナリストの道を歩み、ワシントン・ポスト紙の初代社会部長になったそうです。(私は日本のマスコミは基本的にはお茶の間に迎合しているだけでポリシーがないと思っているので嫌いなんですが、)こういう、筋を通したホンモノのジャーナリストが居たら尊敬に値すると思います。(不勉強なので実例を知りませんが。)

この映画の原題の the Conspirator というのは、共謀者とか陰謀者という意味のようです。 素直に考えれば、メアリー・サラットが共謀者かどうか...という意味なのかと思いますが、考えようによっちゃぁ、陸軍長官スタントンが陰謀者という風にもとれる....   掛けコトバなんですかね。
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コメント 4

怪しい探麺隊

> einstein さん
nice! をありがとうございました。
by 怪しい探麺隊 (2012-12-04 21:52) 

怪しい探麺隊

> JUN さん
nice! をありがとうございました。
by 怪しい探麺隊 (2012-12-04 21:53) 

non_0101

こんにちは。
これはいい映画でしたね~
監督さんも役者も揃っていて、しかもかなり真面目に作られていたので
とても見ごたえがありました。
正義の無いところで人を裁くことの怖さを実感させられました☆
by non_0101 (2012-12-08 11:32) 

怪しい探麺隊

> non_0101 さん
nice! とコメントをありがとうございました。
もう一回観に行こうか迷ってます。このところ観たいの多いですから...
by 怪しい探麺隊 (2012-12-17 01:04) 

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