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終の信託 [映画 た行]

終の信託を観てきました。
2012年10月27日(土)公開
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【鑑賞日:2012年11月9日(金)】
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今回は、以下↓で大変にネタがばれています。

うーーーむ、なんと言ったらいいんでしょう.....

この女医さんもずいぶんだと思うし、患者も患者だと思うし、検事はひどいし・・・・。
これで、いったい誰が得をしたんだろう…というと誰も得をしていなくて、誰かによい結果を1つももたらさず、悪い結果だけを残す(告発→取り調べ→逮捕→起訴→裁判)ことを、いったい何のためにやったんだろうと思うと、とてもむなしくなってしまう。大勢の時間と多大なコスト(=税金)を無駄にして、何かの社会正義が実現されたのかというと、尊厳死というにはほんのちょっと気の早い死に積極的に関わってしまった真面目な医師を社会的に葬り去っただけ
たぶん、医師に感情移入があった分、客観的には誰からも文句が付かない尊厳死よりも判断が早過ぎたのは事実だろう、と感じた。 医学的なことは分からないけれど印象では、気管チューブを抜いたときに身体があれだけ激しく反応(生きようと)することは家族には予想外だっただろうし、看護師が投薬指示に躊躇したことからも麻酔薬の投与量は客観的には過ぎたものだったのだろうと想像するし、それが自然死よりはいささか早い死をもたらしたかも知れない…と思った。

でも、まぁ、殺人じゃなくて自殺幇助みたいなものですよ、実態は。
・・・とはいっても、患者と医師の2人きりの場面で多くの会話と依頼・要請がなされていて、客観証拠が何もない。確かに、証拠がない以上は、本人の望まぬ早過ぎる死をもたらすマッド・ドクターだと見做されても反証できない(だから逮捕・起訴されたんだけれど)。
患者が甘え過ぎ、医者が甘やかし過ぎ。
甘え過ぎという意味は、自分で決められないからお願い…というが、そもそも絶対に人に頼んではいけないこと(この映画のようにとんでもない迷惑を掛けるから)なのにそれが分かっていない、認識が甘い。家族に決めさせるのは可哀想、医者は専門家だから…って発想だろうが、医者は治療の専門家なだけで、分野が全然違うのにミソもクソも一緒に考えてる、このヒトは。
甘やかし過ぎという意味は、家政婦の三田ばりに「それはアナタが決めることです!」的な宣告も(やんわりとした表現にするにしても)時には必要なのに、いい歳になるまで経験積んでいるのに分かっていないのかできていない。

大沢たかお演じる検事が、すごく嫌な奴で映画やドラマでの典型的な検事像。最初っから、落とすためにどうするかだけを考えていて、人間らしい配慮やヒトとしての誠実さなど欠片もない。
言い分もあるでしょうから…と話し始めたにもかかわらず、説明しようとすると「聞かれたことだけ答えなさい!!」と声を荒げ恫喝する。言ってることとやってることが違うけれど、ワザとやっている。
「被害者」というコトバを使った辺りで牙を剥き始めているが、この辺り、鈍感過ぎるというか、「弁護士を呼んでください!!それまではお話しません!!」くらい言う場面なのに、まんまと流れに載せられている。
最後で、検事が「だからお前が責任を取るんだ!!他に責任を取るヤツがいないだろう!!」とでも言うかと思ったら、さすがにそんな表現はしなかったけれども、結果はそういうこと。
・・・・でも、これ、誰かが責任を取らなきゃいけないような何かが果たしてあったんだろうか・・・・
何もなかった気がする。
患者も遺族も回復の望みも無く、医療費だけが嵩み続けることを苦にしている。患者本人は延命治療も苦しみも望んでいない。
それはヒトの命を奪うのは殺人罪だけれど、これは殺人罪で裁く内容だろうか・・・。
殺人罪の構成要件には殺意が欠かせない、と大昔、大学で習った気がする。死なせてあげよう…は殺意だろうか.... 厄介なのは「故意はある」ところ....「何をもたらす故意だったか…」というと、確かに「死をもたらす故意」ではあるなぁ…とも思う。投与した薬品が何アンプルか…にちょっとこだわっていたけれど、あれはどういう意味なんでしょう・・・。3年前の投与数が4アンプル(3アンプル+1アンプル)か6アンプル(3+3アンプル)か、なんて看護師も医師本人も明確に記憶しているものだろうか....(本人も看護師も記憶が変容することがある気がするし....)
行為の結果を予見は、間違いなくしている。それは医師だから当然だ。塚原検事(大沢たかお)は、結果を予見していたのだから殺意はあり、だから殺人だという。事前に決めつけておいた結果に強引に持って行くところが、東京地検特捜部のアノ検事の事件以前の検察官のやり方なんだろうなぁ・・・と感じる。(いまは違うのかは、取り調べを受けたことがないし、身近に受けた人もいないので知りませんが...) 
「〇〇致死」の〇〇に当たるところが思いつかない....(死んだ以上はナントカ致死なんでしょう、きっと。過失はないから過失致死ではない。同意の範囲を踏み越えた治療という意味では傷害致死だけれども、ラストで明らかになるように裁判所も認めるリビング・ウィルが大学ノートに見つかるので、同意範囲踏み越えにも当たらない。結局、死期の判断が早過ぎたという誤診になってしまって、判決はまぁ正しい…ということになる。)

そもそも、3年も経ってから改めて誰かが責任を取る必要があったのだろうか...
告発されたら、検察としては調べないわけにはいかないんだろうけれど.... 身内の事件だと最初から不起訴にしようとして調べるし、身内外でも、一旦不起訴にしたものを警察審査会に言われて再捜査するときにも不起訴目線で調べるけれど、そうでない場合はこういう「起訴に持ち込めるもの」を不起訴にする・・・という発想が無い組織なんでしょうね....
犯罪を構成しているものを恣意的に不起訴にされては具合が悪いのは確かなんだけれど、難しいなぁ・・・・。

この監督はそれでも僕はやっていないとか、法曹界の世間一般とはズレた状況に意見を持っているんだと思います。意見を持って当然の事件もいくつかあったし、まぁ、実際、映画にしたような現実がいくつもあるし、その個々の事象にはやっぱり課題はあると思います。
そんな中で、今回は組織の問題よりも担当検事個人の問題を強く描いてしまっている気がしました。
担当検察事務官も、局所局所では疑問は持ちつつも全体の流れの中では当然検察官に黙って従っています。
監督の真意はわからないけれども、観るヒトによっては、手柄主義のやり手検事に当たった結果として…と受け取る描き方な気がして、それが監督の本意でなければ残念だし、本意であったとしたら私個人的にはそれはこの映画が残念な映画であることを意味する…という、そういう感想を持ちました。


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コメント 4

怪しい探麺隊

> non_0101 さん
nice! をありがとうございました。
by 怪しい探麺隊 (2012-11-11 19:59) 

怪しい探麺隊

> beamuse さん
nice! をありがとうございました。
by 怪しい探麺隊 (2012-11-13 23:52) 

ぽんのんの

映画『終の信託』って、須田先生がモデルなんですか?
似ているとは思いましたが、気づきませんでした

転載させてください
by ぽんのんの (2012-11-16 10:25) 

怪しい探麺隊

> ぼんのんの さん
こんばんは。コメントをありがとうございます。
尊厳死が話題になった事件があったことくらいは記憶していますが、
その医師の名前も記憶していませんし、この映画の原作がその事件をもとにしているのかも知らないし、原作を読んでいないのでこの映画が原作に忠実かどうかもわかりません。
…なので、なんともお答えしようがないです。スミマセン。
by 怪しい探麺隊 (2012-11-18 19:18) 

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